Brooklyn Museum 2001年にデザインしたゴブレット イーヴァ・ズィーセル が年末に亡くなった。105才だったという。ハンガリーで生まれ、32才でニューヨークに渡り、晩年まですばらしい有機的デザインの陶器を作り続けていた。 ズィーセル(エヴァ・ゼイセルと書かれることもあるが正しくはイーヴァ・ズィーセル)の名を知らない人でも彼女のデザインした器はどこかで見かけているだろう。ズィーセルを語る時、ルーシー・リーとの幾つもの共通点を思わずにはいられない。 リーは1902年、ウィーンで生まれ工業美術学校で学んだ。ナチスの迫害を逃れて1938年イギリスに亡命、1995年に93才で亡くなるまでロンドンで生涯家庭用の器を作り続けた。ズィーセルは1906年ブダペストに生まれ、王立美術学院で絵画を学ぶが、叔母の影響で陶芸に転向。ドイツ製陶会社で食器のデザインをした後、旧ソビエトで工業デザイナーとして仕事をしていたがスターリン暗殺の容疑で逮捕される。16ヶ月間投獄の後、何の説明もなく解放され、その後ウィーンへ行くがナチスの台頭によって1938年イギリスに渡る。 同年アメリカに渡り、ニューヨークに着いて2日目にアメリカの製陶業者を図書館で調べて連絡をとっている。ルーシー・リーもロンドンに亡命して自分から陶芸の大御所バーナード・リーチに連絡をとり教えをこうている。多くの、女性のパイオニア世代がそうであるように、二人とも実行の人であり、 強い意志をもってひたむきに自分の思う道を進んで来たようにみえる。 また、二人ともバウハウスの影響を受けてシンプルでありながら優雅な作品を作った。生活の為の作品、デザインを追求し、「実用でありかつ美しい家庭用のもの」を求め続けた。 ズィーセルは「男性には家庭用の器をどのように作るかの概念が全くない、故に自分たちの使う物は女性がデザインするべき」と語っている。
20世紀を代表する最も偉大な陶芸家として記憶されるルーシー・リーとハンス・コパー。そしてバーナード・リーチ。その作品と彼らに関わった人たちのこと、そして見聞きした展覧会のあれこれを思い浮かぶままに。ルーシー・リーとハンス・コパーの作品を愛するひとへ。