クリムトによるストックレイ邸の壁の装飾 c.1920-38 T.Birks 「ルーシー・リー」より ニューヨーク・タイムズで「運命が二人の出会いをもたらした・・・」と紹介されたイギリスの陶芸家ルーシー・リーとハンス・コパーは、バーナード・リーチとともに20世紀陶芸の巨匠と目されます。二人はナチスから逃れてロンドンで出会いますが生涯稀有のパートナーシップと友情で結ばれ、彼らの作品はお互いを抜きに語ることはできないと言われます。その二人の物語を紹介していきます。 現在はユネスコの世界遺産となっているベルギー、ブリュッセルの ストックレイ邸 は、ベルギーの資産家、アドルフ・ストックレイの依頼でウィーン分離派のヨーゼフ・ホフマンがデザインしたものだ。 グスタフ・クリムト が内装を手がけ、壁の装飾、家具や調度品も担っている。そのストックレイ邸に、まだ学生のルーシーの作品をホフマンは持っていき展示した。それは当時クリムトたちウィーン分離派の目指した、建築と壁紙や家具調度品、グリーティングカードに至るまで、すべてに調和の取れたデザインが必要であるという総合芸術の観念に、まだ新人であったルーシーの作品が合致したということだろう。 ホフマンがルーシーの作品を評価して展示したという事実は、ルーシーにとって大きな自信につながる出来事であったろう。彼がフランスに送ったルーシーの作品は後にロンドン、ミラノに巡回され、ミラノ・トリエンナーレで金メダル、パリ国際店で銀メダルを受賞するなど、ヨーロッパでルーシーの名が一躍評判になるきっかけを作った。 ルーシーのシンプルなうつわを評価して国際展に送ったホフマンと、陶芸の技術的な訓練と知識を与えたポヴォルニーによってルーシーは陶芸家としての人生を歩み始めたと言えるだろう。実際にルーシーが学校時代に何百という実験を繰り返しその結果をノートにまとめていたことが知られるが、実際にどのような実験をし、どのような釉薬を作っていたのだろうか。
20世紀を代表する最も偉大な陶芸家として記憶されるルーシー・リーとハンス・コパー。そしてバーナード・リーチ。その作品と彼らに関わった人たちのこと、そして見聞きした展覧会のあれこれを思い浮かぶままに。ルーシー・リーとハンス・コパーの作品を愛するひとへ。