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Showing posts from May, 2010

ハンス・コパーのもう一つの燭台

ハンス・コパーの有名な燭台はロンドンから2時間ほど北の コベントリー大聖堂にある。2メートルを超える大なもので 今回のハンス・コパー展にそのマケットが展示されている。 あまり知られていないが、ハンス・コパーはもう一対の 燭台を作り、今はロンドン市内のセント・ステファン・ウォルブルック 教会にある。これは一度オークションにかけられ、それに反対 する人たちの抗議でオークションで落とされてからこの 教会に寄贈されたものだ。 燭台は現在工事のため教会の倉庫に保管されているがこの 写真は一点だけ倉庫から取り出して祭壇に飾って見せてくれた ものだ。 なお、この祭壇はヘンリー・ムーアの作品。ヘンリー・ムーアの 「祭壇は教会の中心に、教会はロンドンの中心に」在るという考えの もとに、祭壇は教会の奥まったところに位置するのではなく 明るい空間の中央に置かれ、祈る者はそのまわりにひざまづく。 何トンもあるトラバーチン大理石がゆるやかなカーブに削られ コパーの黒いボリュームある燭台が映える。

ハンス・コパーの花器

以前紹介したと思うが、ハンス・コパーの花器には 中にステムホルダーが作られている。 ステムホルダーとは花を生けたとき、茎がばらばらに ならないように作られた花器の中の器のことだ。 この花器は3つの部分をろくろでひいて合接している。 シリンダー形のベース、上に乗ったカップ形のボディ、 そしてベースとボディを突き抜けて中にまっすぐ延びる ステムホルダー。 ボディはろくろびきしたあと、両側から押してえくぼの ようなアクセントのある楕円(長方形)になっている。 金属を思わせる黒は微妙に色を変え表情を変える。 ステムホルダーの底には印章が押されている。のびやかな 美しいコパーのサインは、Hを下にして見るように押されている。 Hを下に、その上にCを乗せることで、ろくろの上に器が 乗っている形を作っている。コパーのユーモア溢れるサインだ。

国立新美術館 ルーシー・リー展

国立新美術館「ルーシー・リー展」カタログ表紙 東京国立近代美術館企画のルーシー・リー展が開催された。 国立新美術館でのルーシー・リー展 オープンは雨にも かかわらずごったがえすほど沢山の人だった。 会場を見るにもぞろぞろと行列を作って見てまわる。 先にウェッジウッドのカップ・アンド・ソーサーを見に行く。 淡い水色のジャスパー・ウェアのプロトタイプ21点。 リーもコパーもコーヒー飲みであったから、これくらい小さな 手のひらに入るようなカップを好んだのかもしれない。 ハンス・コパーもルーシー・リーも器にこだわった。 ルーシー・リーはくりかえし「私はポットを作るだけ」と 言い、BBCのフィルムはもちろんBBCラジオでも 「使う物を作る」と語っている。 コパーも「Art should function.」「Sculpture should function.」 と語ったと伝えられる。「芸術は機能すべき」ということだ。 花生けの中には枝が広がらないように支えるカップ(ステム・ホルダー) が作られている。 その同じものをルーシー・リーの花生けにも見ることができる。 1950年代の作品でシリンダー形の花生けの中にもう一つ細い シリンダーが入っている。マンガン釉薬のボディに白い 釉薬の口縁、そこにマンガンの細い線が象嵌されている。 50年代はハンス・コパーもまだアルビオン・ミューズの工房に いたときなので二人で同じようなステム・ホルダー(枝の支え) のある花生けを作っていたのは興味深い。使う作品を作る、という 明確な意図があったのだろう。 ただ、いかに作家自身が「使える器」とはいってもルーシー・リーの 80年代後半の器、またハンス・コパーのキクラデスに至る器たちは とても実際の用に用いることは難しいだろう。もし自分の所蔵品 であれば、ちょっと花を生けてみたらどんな景色だろうと、ふと 思ってしまうけれど。 カタログはとても美しい。335ページ。いかにも高そうな高そうな 装丁だ。ピンクの象嵌の器をイメージした見返し、花布、しおりひも が付いて品の良い華やかさだ。 個人的な趣味で言えばウェッジウッドのブルーの花布も さぞすてきだったろうと思う。でも少し寂しくなってしまうだろうか。