日本語版『ルーシー・リー』の目次より エマニュエル・クーパー氏の最後の著書となった『ルーシー・リー』は全14章から成っている。今まで知られていなかったルーシー・リーのウィーン時代、家庭環境、危機迫るウィーン脱出、ロンドンでの新生活、キャリアを確立していくアルビオン・ミューズでの生活、釉薬のレシピや技法、その交友関係を含めて詳細に紹介されている。 その中で、ナチスドイツのヒトラーがウィーンに侵攻した時、ルーシーが『風と共に去りぬ』を読んでいたという描写がある。いうまでもなくそれはマーガレット・ミッチェルの書いたアメリカの南北戦争時を描いた小説だ。 クーパー氏の著書では、6章のタイトル「明日はまた別の日」は、主人公スカーレット・オハラが最後に、明日に希望を託してつぶやいた言葉から採られている。原書では「Tomorrow is Another Day」。 小説では「明日は明日の風が吹く」と訳されたがこれはないだろう。スカーレット・オハラがこのセリフを吐くとはとても思えない。そのような投げやりな言葉ではなく、 「私にはタラ(故郷の地)がある、どうすれば良いか明日考えよう。結局どうあろうと明日という別の日がある」 という希望をつなぐ言葉なのだと思う。 「新しい明日は、必ず来る」とか「明日という日がある」と訳されるのもある。 スカーレットの意思を問うなら原文そのままに、「明日という日がある」の意味合いが自然だろうと思う。 ルーシー・リーの生き方を見るとき、危機に際して「明日はまた別の日」とつぶやいたスカーレット・オハラにルーシーが自身を重ね合わせたであろう、とする著者の思いもまた自然に思われる。
20世紀を代表する最も偉大な陶芸家として記憶されるルーシー・リーとハンス・コパー。そしてバーナード・リーチ。その作品と彼らに関わった人たちのこと、そして見聞きした展覧会のあれこれを思い浮かぶままに。ルーシー・リーとハンス・コパーの作品を愛するひとへ。