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ウィーン、ヴォルツァイレのアパート |
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王立家具博物館にあるプリシュケによる図面 |
ニューヨーク・タイムズで「運命が二人の出会いをもたらした・・・」と紹介されたイギリスの陶芸家ルーシー・リーとハンス・コパーは、バーナード・リーチとともに20世紀陶芸の巨匠と目されます。二人はナチスから逃れてロンドンで出会いますが生涯稀有のパートナーシップと友情で結ばれ、彼らの作品はお互いを抜きに語ることはできないと言われます。その二人の物語を紹介していきます。
1926年6月に工業美術学校を卒業したルーシーは9月にハンス・リーと結婚。ほぼ三年をルーシーの実家で新婚生活を送り、やがて叔父サンダーの所有するヴォルツァイレ24番のアパート最上階を提供してもらえることになった。
この時ルーシーは椅子を購入したことで知り合った(工業美術学校のときに知り合ったという説もある)新進の建築家エルンスト・プリシュケ(1903-1992)にアパートの家具デザインを依頼した。プリシュケは後にオーストリアを代表する建築家として活躍し、ルーシーの家具は現在オーストリア王立家具博物館にプリシュケの書いた図面と共に展示されている。
ルーシーはこのヴォルツァイレのアパートに作った工房で作陶に没頭し、モンザ国際展やロンドンのオーストリア美術展にも出品して、ミラノの展覧会で金賞、パリ国際展で銀賞を受賞するなど、ヨーロッパの陶芸家としてキャリアを積んでいた。
工房には窯がなかったのでルーシーは工業美術学校まで生の作品を運んで焼成したが、運ぶ距離を節約するため素焼きをせず直接本焼きした。これがルーシーの作品に特徴ある表情を作る「一度焼成方式」のきっかけになったとルーシーはトニー・バークス(ルーシーの伝記を書いた)に語っている。
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