静岡市美術館でハンス・コパー展が始まった。
この静岡市美術館でのコパー展は2099年に兵庫県陶芸美術館で
スタートを切った今回の巡回最後の会場となる。これほど本格的な
コパーの展覧会は海外も含めてもう当分見ることができないだろう。
静岡市美術館は新幹線の停まる静岡駅前の高層ビルに入った
ユニークな街中美術館だ。前身の静岡アートギャラリー
時代には「ルーシー・リー生誕100年記念 静寂の美」展
を開催している。
新しく場所を変えて昨年オープンした美術館は
真っ白な壁、白木の床、黒の格子状の天井を持つ
ニュートラルなすばらしい空間となっている。
コパーの展示作品は
コパーが制作した土地の名前をとって
アルビオンミューズ、ディグズウェル、ロンドン
フルーム、のパートに分かれて展示され、最後の部屋に
ルーシー・リーの作品が展示されている。
これは前にも書いたかもしれないが、
ニューヨークのメトロポリタンミュージアムで初めての
個人作家を取り上げた展覧会となった
ルーシー・リーとハンス・コパーの二人展で
「運命が二人の出会いをもたらした」と紹介されている。
どちらを抜きにしてもどちらかを語ることはできないと
言われるほど、お互いに影響を与え合った作家だ。
戦後仕事を求めてコパーがアルビオンミューズの工房のドアを
たたいてからその後13年間ルーシー・リーの工房でコパーは
制作を共にした。
二人は制作において多くの共通点を持っている。まず
素焼きせずに一度焼成をする技法。これは経済的なことも
あっただろうけれど、生地と釉薬、化粧土が一体化した
特徴ある表情を作ることを意図してもいるだろう。
そして粘土。Tマテリアルというシャモットの混ざった粘土。
ろくろによる成形。ゼーゲルコーン8の焼成温度。電気の窯。
部分を作りそれを合わせてつなぐ合接の手法。
それでいながら二人の作品は非常に異なる。ルーシー・リーの
華麗な色使いに対してコパーはあくまで白、茶、黒を
基本とした色以外を使おうとしない。そしてその少ない色調から
これほど豊かな表情が生まれていることに驚かされる。
静岡市美術館でのハンス・コパー展は6月26日まで開催されます。
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