ルーシー・リーはバーナード・リーチ、ハンス・コパーと並び、
20世紀の巨匠と目された陶芸家です。
1902年ウィーンに生まれ、ウィーン工業美術学校を卒業して陶芸家として
活躍しましたが、1938年、ナチスの迫害を逃れてロンドンに渡り、
生涯イギリスで作品を作り続けました。
ルーシー・リーの作品はそのそぎ落とされた簡明なフォルムと、繊細で
洗練された装飾とが見事に融合し彼女独自の静寂な美を生み出しています。
ルーシー・リーはすべての作品をろくろで作り、釉薬もろくろの上で
筆で塗ります。また部分に分けてろくろ挽きしたものを合接して
一つの作品に仕上げる事も多く行いました。
掻き落としで繊細な模様を描き、高台の裏にも美しい線をていねいに
仕上げます。もう一つ特徴的な技法として、複数の色の粘土をろくろに重ね、
そのままろくろ挽きすることで淡いスパイラル模様が立ち上がります。
バーナード・リーチに、リーの作品が「薄すぎる」と批判され
一時期厚手のポットを作りますが、ハンス・コパーに「自分自身の器を
作れば良い」と励まされ、本来の自分らしい作品に立ち返ります。
彼女の作品は世界各地の美術館でコレクションされており、最も著名な
コレクターの一人、イギリスのデイヴィド・アッテンボロー卿は
「今でもルーシー・リーの作品で見た事のない形や色に出会う。
しかし、それでいて見た瞬間に、まぎれもなくこれはルーシー・リーの
手になるものだ、とわかるのだ」
と語っています。
1994、5年ニューヨークのメトロポリタン美術館で初めてとりあげた
個人作家としてルーシー・リーとハンス・コパーの展覧会が開催されました。
その会期が終わった1995年4月、ほぼ20世紀を生きたルーシー・リーは
亡くなりました。
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