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アイゼンシュタット1910−1920年代 crafts study centre |
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叔父のアレキサンダー・ヴォルフ 1890年代 crafts study centre |
ニューヨーク・タイムズで「運命が二人の出会いをもたらした・・・」と紹介されたイギリスの陶芸家ルーシー・リーとハンス・コパーは、バーナード・リーチとともに20世紀陶芸の巨匠と目されます。二人はナチスから逃れてロンドンで出会いますが生涯稀有のパートナーシップと友情で結ばれ、彼らの作品はお互いを抜きに語ることはできないと言われます。その二人の物語を紹介していきます。
ルーシー・リーは後にトニー・バークスのインタビューに答えて「私は男性によって作られた」との言葉を残している。この言葉が独り歩きしてさまざまな解釈を生むことを恐れずに言えば、ルーシーの生涯に重要な影響を及ぼした男性たちの名前をいくつも挙げることができる。兄のポール、エルンスト・リー、ハンス・リー、バーナード・リーチ、エルンスト・プリシュケ、フリッツ・ランプル、そしていうまでもなく後に出会うハンス・コパー。
しかし少女時代のルーシーに最も影響を与えた一人は、間違いなく伯父のサンダー・ヴォルフといえるだろう。生涯独身で自由に世界を旅し、母の生家アイゼンシュタットのワイナリーを兄とともに相続して発展させ、のちにアイゼンシュタットの建物を博物館にした伯父。
アイゼンシュタットの敷地からはローマ時代の遺物や陶器の破片が数多く発掘され、サンダー伯父からもらってそのうちのひとつをルーシーは生涯そばに置いていた。世界各地を旅行していたサンダーは、様々な文化圏の工芸品を収集し持ち帰っていた。ルーシーは伯父の土産話を聞きその収集品をを見て育った。
ルーシーは1921年、ポールの勧めてくれた美術の道を進もうという意思を持って、大学出願資格のある優秀な成績で学校を卒業した。
サンダーは、エルンストが亡くなったことのルーシーの悲しみを思いやり、また卒業祝いを兼ねてルーシーとその従姉妹たちをヨーロッパ旅行に招待した。サンダー伯父はそれまでも、スイスでのスキー旅行などに彼女たちを連れ出していたが、今回の冒険と興奮に満ちたその野心的旅行計画は、過保護の父母を大いに心配させた。しかしルーシーにとっては「伯父と一緒にアマゾンや南アフリカにも行けば良かった」と思わせるほどの刺激的な旅だった。
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